機械彫刻の書体に関するJIS規格について
機械彫刻とはアクリル板やエッチング銘板、アルマイト銘板などの様々な素材の表面や塗装面に機械彫刻機を使用して文字を彫刻していく加工方法のことで、社銘板や目盛板などの銘板に使用されています。
そんな機械彫刻には機械彫刻用標準書体という、日本工業規格のJIS規格で定められた標準書体があり、JIS Z 8903、JIS Z 8904、JIS Z 8905、JIS Z 8906の4種類が定められています。 今回は、機械彫刻の書体に関する規格についてご説明していきます。
目次
機械彫刻用標準書体とは
機械彫刻用標準書体とは彫刻盤に彫刻で文字を入力するときの字形を定めた規格で、日本工業規格のJIS Z 8903、JIS Z 8904、JIS Z 8905、JIS Z 8906で定められている、彫刻に用いる書体のことを言います。
また、規格では文字のストロークのみ定めてあり、このストロークに規定の太さで肉付けをすることで被彫刻物の文字とします。また、機械彫刻用標準書体は手動式彫刻機を前提に設計されているため、原版の損傷しにくさや作業能率が考慮されており、「第」を「㐧」、「乗」の中央を「丗」など、撥ねを省略していたり、点画を連続させたりする字形が特徴です。 また、原版が損傷しにくいように線の集中を避け、交わる角度を直角に近づけ、角は曲線とされています。刃の上げ下ろし回数を減らして作業能率を向上させるため、筆押さえやハネなどを省き、なるべく線を連続させてあります。
それぞれの規格を簡単にご紹介します。
JIS Z 8903
JIS Z 8903は常用漢字表の漢字を彫刻盤によって小形に彫刻するときの標準書体について規定したものです。規格名称は機械彫刻用標準書体(常用漢字)です。
JIS Z 8904
JIS Z 8904は片仮名を彫刻盤によって小形に彫刻するときの標準書体について規定したものです。規格名称は機械彫刻用標準書体(かたかな)です。
JIS Z 8905
JIS Z 8905は数字 と アルファベットを彫刻盤によって小形に彫刻するときの標準書体について規定したものです。規格名称は機械彫刻用標準書体(アラビア数字・ローマ字)です。
JIS Z 8906
JIS Z 8905はひらがなを彫刻盤によって小形に彫刻するときの標準書体について規定したものです。規格名称は機械彫刻用標準書体(ひらがな)です。
以上のように、彫刻の文字と言っても細かく規定がわかれています。
機械彫刻用標準書体のJIS規格
上記で述べたように、機械彫刻用標準書体のJIS規格はそれぞれ、常用漢字、片仮名、アラビア数字・ローマ字、平仮名について定められています。 彫刻機では回転する刃によって軌跡を描くように彫刻するため、文字は全ての字画が一定の線幅をもち、その先端は半円形になります。
明朝体などの画数の少ない字は太く、画数の多い字は細くするといった調整は機械彫刻文字ではききません。つまり機械では同じ太さしか彫れないため明朝体は表現できず、かといって刃を回転させる関係で常に角を出したラインを引けないという都合があったための標準書体が丸ゴシック体になりました。こまた、彫刻の文字を見比べてみると片仮名が漢字に比べて細く見えるという特徴もあります。ですので、漢字とかなを混ぜるときは、その点を留意しなければいけません。
略字
JIS Z 8903にはJIS規格の付属書2において、漢字の略字の字形に関する規定があります。上記でお伝えした「第」の略字の「㐧」や乗」の中央を「丗」に略したりなどです。これは、彫刻の文字では複雑な字形を刻印しても解読が難しいために規定されています。また、画数が多いと彫刻が大変になるので略字体が作られていて、そちらがメインで使われる想定だったとされています。
また、規格が1984年に改正版になると、通用字体が追加されるとともにそちらが標準とされました。略字体は文字の大きさが5 mm以下で注文者の指定がない場合に用いることができるものとされます。
機械彫刻の書体に関するJIS規格の用語について
機械彫刻の書体に関するJIS規格には様々な規定があります。 まず、機械彫刻の加工時には、回転する刃物を備えた彫刻盤を用いて,材料に文字を彫ることと定められています。また、書体はJIS規格の付属書に示されている「原版用書体」を標準書体とし、文字の仕上がりの形をあわせる必要があります。「原版用書体」とは、機械彫刻をする際の原形となる書体のことです。
他にも文字の大きさや太さにも指定があります。
機械彫刻書体は統一された美しい書体
普段私たちがよく目にする銘板の中にも彫刻の銘板は数多くあります。そんな中で今回は彫刻の書体についてご説明させていただきました。シンプルな文字に見えても、彫刻銘板を作成するうえで様々な規定があり、その規定をを守ることで、統一感のある美しい彫刻文字の銘板を作成することが可能になっているのです。
また面白いのが、丸みのあるゴシック体に統一した理由が、機械の都合で必然的にそうする必要があったためなど、今の彫刻の書体が出来上がった理由を知ると、今まで何気なく見ていた彫刻の銘板にも新たな発見があるかもしれません。 彫刻の銘板をお考えでしたら、ぜひその文字の形にも注目してみてください。
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